2025年3月の記事一覧
第60回 卒業証書授与式 式辞
式辞
春の兆しが日に日に強く感じられるようになってきた今日の佳き日、本校PTA会長をはじめ、多くの保護者の皆様にご臨席を賜り、こうして「埼玉県立鴻巣女子高等学校 第六十回 卒業証書授与式」を挙行できますことは、本校関者にとりましても、大きな喜びでございます。ご臨席を賜りました皆様に、厚く御礼申し上げます。
本校第六十回卒業となる百四名の卒業生の皆さん、卒業誠におめでとうございます。
卒業生の皆さんの高校時代を振り返ると、コロナ禍真っただ中での高校入試ではじまり高校生活はどうなるかと心配であったと思います。幸い、入学当初から学校行事などは予定どおりに行え、二年時には神戸・京都への修学旅行にも行けました。特に三年時はコロナの影響もほとんどなく、文化祭にも多くの来校者があり、入学した当初よりは充実した高校生活を送れたのではないかと推察いたします。
卒業生のみなさんと私とは、みなさんが2年生のときからのお付き合いでした。毎朝、昇降口で先生方とあいさつとともに出迎え、各教室をのぞきに行き、出欠状況の確認をしていました。朝読書の前に私が教室にずかずかと入っていっても、あいさつをしてくれて、みなさんの明るい笑顔を見て安心したものです。修学旅行に引率したこともあり、それを境に、あいさつもよくしてくれるようになったと思います。
そこで卒業生のみなさんに、私から卒業にあたって贈る言葉として、改めて「あいさつをすること」をお贈りします。
卒業後に就職・進学する人と道は違えども、人との付き合いは多くなっていきます。特に、社会人となると、友だちのような親しい人以外の方とも付き合うことがでてくるでしょう。仕事上の付き合いだけの人とでも、仕事をする上では、気持ちよく仕事ができるようにしたいものです。
ここで大切になるのが、「あいさつ」です。あいさつは、相手の方との信頼関係を築く第一歩で、コミュニケーションのはじまりでもあります。あいさつで、相手の方を尊重しているという意思表示にもなります。返ってきたあいさつの調子で、相手の方の状況や気分を推し量ることもでき、そこから話題を広げられることもできるでしょう。あいさつは、社会性を身につけていく上で基本となるものです。難しい話ではありません。相手の顔を見て、明るく言えばいいのです。ぜひ、家庭でも、朝起きたら保護者の方に、かしこまらないまでも「おはよう」とあいさつをするようにしてください。小さな行為かもしれませんが、その日一日のスタートを良いものにし、活力を与えてくれるものになります。
コロナ禍の3年間は、ソーシャルディスタンスとともに、会話することにも制限があり、またマスクをしていることから相手の顔の表情もわかりにくい状況がありました。友達どうしの付き合い方や相手の気持ちを慮る気持ちを育む機会が奪われてしまったのではないかと心配をしました。
コロナ禍が明けて、コロナ禍前のようにオンラインから集合型に、自宅勤務から出社しての仕事に戻りつつあります。通信販売大手のAmazonは、この1月から自宅勤務を廃止し、すべて出社での業務としています。その理由は、顔を合わせての業務の方が効率がよいとのことです。他の会社もこれに追随する傾向にあります。モバイルオーダーなど、便利なところは残しつつ、人と直接顔を合わせての仕事は、今後も残るものと思われます。そこには、最初のあいさつがあります。剣道や柔道などの武道では、あいさつで始まりあいさつで終わると言います。このことは、武道の世界にとどまらず、普遍的なことです。あいさつを大事にして良好な人間関係を築けるようにしてください。
保護者の皆様におかれましては、ご息女のご卒業、誠におめでとうございます。
本校入学時と比べて心身ともに立派に成長した卒業生の皆さんの姿を、職員一同とても頼もしく思っております。この卒業を機に、さらなる大人としての成長を遂げてくれるものと期待をしております。
ご息女の在学中、本校教育活動への格別のご支援とご協力をいただきましたことに、改めて衷心より感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。
結びに、第六十回卒業生の皆さんが、先行き不透明な社会に向かって果敢にチャレンジして、素晴らしい人生を歩むことを心から祈念申し上げ、式辞といたします。
令和七年三月十二日
埼玉県立鴻巣女子高等学校長 小川 剛